ITI Congress Japan 2012

レポーター黒江・野村

6月2日(土)

最適なインプラント審美治療

Optimal Implant Esthetics

Dr. D.Buser

How to optimize esthetic outcomes with appropriate surgical techniques

インプラント治療の審美的な結果は純粋に外科手技に影響される。ベルン大学にて20年かけて確立した審美的な結果を得るための外科的なコンセプトが示された。審美的なインプラント治療における3つの戦略として、1)治療概念は厳密にエビデンスベースであり保守的であること。2)インプラント治療の魅力を改善させるために過去15年にわたり治療コンセプトは慎重に修正された。外科手技を最小限すること、治癒期間や治療期間の減少、また、疼痛を軽減させることなどが挙げられる。3)日常の臨床において前臨床試験や臨床試験に基づいた優れた科学的な論文に裏付けられたバイオマテリアルを用いること。それはインプラントやバリアメンブレンそして骨造成材料などである。

組織のバイオロジーを理解すること。特に、生物学的幅径や抜歯後の歯槽堤の変化について。ERA (Esthetic Risk Assessment) を通じてリスク評価をおこなうこと。

コンフォートゾーン、デンジャーゾーンのコンセプトに従った、正確な3次元的なインプラント埋入をおこなうこと。多くの患者において、骨の増大は、適切なボーンフィラーやコラーゲンメンブレンを用いたGBRにて成し遂げられる。テンションフリーな創傷の1次閉鎖は生体材料を保護する。

また、後ろ向き研究にて行われた、10年間のSLA表面のインプラントの生存率、成功率を示した。(BuserらClin Impl Dent Rel Res 2012)。511本のインプラントのうち、インプラント失敗1.2%(n=6)、インプラント周囲炎の治療中0・4%(n=2)、インプラント周囲炎の既往1.4%(n=7)、インプラント成功率97.0%(n=496)、インプラント生存率98.8%であった。これらの低い失敗率の背景には、低いリスクの外科術式、科学的に立証されたバイオマテリアルの使用、より良い外科医の教育や臨床経験が必要とのことであった。

 

Computer Based Planning and Guided Surgery

Dr. 佐藤 孝弘

デジタルプランニング、ガイドサージェリーを製品ごとに紹介し、コンピューターによる埋入計画とガイド手術に関して現在の到達点について示した。ガイドサージェリーにおいては術者の習熟度が影響するため、簡単な症例から始める事を推奨。また、ITI NETを有効に活用することを提案した。


 
ESTHETIC ASSESSMENT : FROM EXPECTATION TO REALITY

Dr. Urs Belser

口腔の審美に関してBelserの著書に書かれているように、軟組織および硬組織に対する客観的で原則的な基準を含んでなくてはならない。審美的チェックリストを用いることで簡単に整理することができる。(ボンディット ポーセレン レストレイションズ クインテッセンス参考)。基本的客観的基準として1.歯肉の健康、2。歯間空隙の閉鎖、3.歯軸、4.歯肉輪郭の頂点、5.歯肉三角のバランス、6.隣接面コンタクトの高さ、7.相対的歯の大きさ、8.歯の形の基本的特徴、9.歯の特徴表現、10.表面性状、11.色、12.切縁の構成、13.下口唇のライン、14.微笑の対称性が挙げられる。

また、歯肉と歯の色の客観的な評価方法を示した。歯肉色調に関しては、Pink Esthetic Score (PES). 歯の色調はWhite Esthetic Score (WES) による評価を推奨した。PESは1. Mesial papilla, 2. Distal papilla, 3.Curvature facial mucosa, 4.Level facial mucosa, 5.Root(convexity)/soft tissue color & texture.の5項目よりなる。WESは、1.Tooth form, 2.Outline / volume, 3.Color (Hue / Value), 4.Surface texture, 5.Translucency / characterization.の5項目よりなる。実際に双方にて評価したところ、歯肉の評価であるPESよりも、歯の色の評価であるWESのほうが高い値を得るのは難しいことが分かった。PESの平均値が7.80に対し、WESは6.90(臨床的な許容範囲は6.0)(Belserら J.Perio  2009).


Using BMP-2 to Enhance Oral Bone Formation

Dr. David L. Cochran

FDAの認可が2002年に脊椎固定のためのBMP-2の使用、2007年には上顎洞の骨増加が認められている。INFUSEⓇはrhBMP-2(recombinant human morphogenetic protein-2)を含む製品である。INFUSEⓇは100%アクティブであり、1.5mg/ccの濃度の製品である。牛由来タイプ1コラーゲンスポンジACS(Absorbable collagen sponge)と共に用いられる。コラーゲンスポンジはBMPの局所濃度を保持する役割がある。INFUSEⓇを使用した骨造成はインプラント埋入部位において新たな骨組織を誘導する。FDBA(Freeze dried bone)には成長因子が少ない。DFDBAは0.000001mg/ml のBMPに対しINFUSEは1.5mg/mlである。いくつかの文献を提示し、有用性を示した。その中で組織的な結果としてrhBMP-2を加えて4~12週後の特に顕著な結果を示した。新たな骨領域の量、骨とインプラントの接触率、骨の締める割合について挙げられた。また、メンブレンの使用を比較したが、4週においてメンブレンを使用しない方がメンブレンを使用した群より骨形成が多かった。しかし、12週において両者の優位差は無かった。

 

6/3 AM

モーニングセッション

Dr.三上格、Dr. 北條正秋、Dr. 佐藤淳一

インプラント治療を最適にするデジタルソリューション

 このセッションでは、CIDから三上先生と北条先生が講演されました。内容は昨年のCID10での講演をベースにして、ブラッシュアップされたものでした。ガイドサージェリーに関しては、目新しさよりも熟成が進んできたように感じました。ストローマンガイドの話が増えていましたが、後発だけあってガイドサージェリーの問題点として上がっていた課題への対応が進んでいました。

 

Dr.前田潤一郎、井汲憲治、林秀一

無歯顎及び多数歯欠損に対する治療計画

 このセッションではCIDから前田先生、林先生が講演されました。早朝から満席で立ち見が出るほどの会場から充実した内容であることは言うまでもなく。

SAC分類のコンセプトと現在のエビデンスが、十分に含まれ。講演内容として現在のまさに到達点を、示す内容であった。

一般講演

インプラント外科における革新的技術

Dr. 石川、Dr.船越栄次、Dr.秋本健、Dr.嶋田淳

 

タイトル通りに、このセッションが新しい内容を最も多く含んでいました。示された内容の多くがITIのコンセンサスから外れていますが、皆がコンセンサス内に留まっていたら進歩は無くなるため、トップランナーの方々にはコンセンサスを超えたチャレンジをしていただき、記録を残して新たなエビデンスを作ってもらいたいと思います。

 石川先生は、チタンメッシュとコラーゲンメンブレンを併用して行う三次元的GBRを紹介されました。従来であればブロック骨移植の適応となるようなケースを、GBRで対応されていました。

 船越先生は、低侵襲で増生が可能となるオープンバリアメンブレンテクニックを紹介されました。ソケットプリザベーションに限らず、骨増生にもダイナミックに応用されており、 最近AMMを中心にCIDでも積極的に取り入れている先生が増えてきているため、今後症例が増え評価が定まっていくことが期待されます。

 秋本先生は、前歯部即時埋入の審美的予知性を高める術式に関する講演でした。2日間を通してBuser先生とBelser先生は審美領域での即時埋入・即時修復はリスクが高く行うべきでないと強調されていたことと対照的に、軟組織退縮を補うために独自の工夫をした手法で良好な結果を報告されました。症例選択と軟組織退縮に対する対策を適切に行うことで、即時埋入でも予知性の高い結果を得ることができる可能性を示されました。

 嶋田先生は、内視鏡を用いて歯槽頂アプローチで上顎洞底が挙上されて行く様子を動画で示されました。上顎洞粘膜を通して骨片の鋭縁が見え、上顎洞粘膜を穿孔するリスクが高いことを視覚的に実感することができました。

 このセッションで提示されたテクニックは、それぞれの術式を熟知し十分な経験を持つトップクラスの臨床医の手によるもので、誰もが導入してすぐに同じ結果を出せるわけではないことを注意しなければならないでしょう。

 

ポスター発表

CIDから9題の発表が以下の先生により報告された。

佐久間栄:オールジルコニアの上部構造を用いたインプラント修復

岡田素平太:抜歯後の軟組織の保持の分類

中島和敏:オステオトームによる上顎洞挙上術後に生じる骨の改造のCT分析

寺崎恵多朗:抜歯即時埋入おけるボーンレベルインプラントの有効性について

~HAインプラントとの比較~

堀良彦:審美部位の単独欠損ケースで審美性改善のため上部構造をやり直した症例

岩泉理沙:d-PTEFメンブレンを使用したオープンバリアテクニックによって歯槽堤保存術を行った1症例

大和田弘幸:インプラント併用全顎治療における審美と咬合の一考察

高田尚美:前歯部におけるインプラントの二次手術を歯科用顕微鏡下で行った1症例について

甘利佳之:歯槽堤温存を考慮したGBR法

以上9題(プログラム記載順)の発表が会員から発表され、ポスターアワードには、CIDクラブ理事である中島和敏先生が受賞された。

一会員として大変名誉な事であると思われる。

 

海外招待特別講演

Surgical handling of esthetic implant failures

Dr. D. Buser

 審美的失敗に対する外科的アプローチに関する講演でした。基本的な内容は2010年のWorld symposiumの講演と共通で、ポジションの悪いインプラントは撤去してCTGもしくはFGGを併用して一次閉鎖を行い、GBR(場合によってはFGGを併用)を行い、三次元的に正しい位置にインプラントを埋入しなおすというものでした。インプラントを撤去する際に、口蓋側の骨を失わないためにトレファンバーを使用しないよう強調されていました。最近の進歩として、骨削することなくリバーストルクを加えてインテグレーションを破壊してインプラントと撤去するインスツルメントを挙げていました。

 

生物学的メカニズムに基づいたインプラント形態

Dr. D. Cochran

 プラットフォームシフティングが、なぜ従来型のバットジョイントのコネクションに比べて骨吸収を起こしにくいかについて詳細な解説がありました。強調されていた項目の一つに、Straumann BLIではフィクスチャーとアバットメントのジャンクション部は上皮ではなく結合組織で被われているという点でした。その臨床的意義は明らかでないものの、これまで観察されたことのない所見であることを強調されていました。

 未発表の結果として話された、プラットフォームシフティングを含む様々なアバットメントとフィクスチャーのジャンクションの設定と骨吸収の関係は、非常に興味深い内容でした。確かにプラットフォームシフティングは骨吸収抑制に有利であるが、ジャンクションが骨頂部から離れているTLIの方がより吸収が少ないという点が印象的でした。これが理由かはわかりませんが、ディスカッションでBuser先生が、審美領域の複数歯欠損の場合にBLIではシングルケースのような良好な結果が出ないことがあり、最近はTLIを使うことが多いと話されていました。華々しく登場したBLIの臨床評価が定まって来て、TLIが再評価されていることが感じられました。やはり、長期経過を追うことで初めてわかることがあることを再認識しました。



まとめ

次回コンセンサス会議の前年ということもあり、全体を通して見れば特に目新しいトピックは少なかったように思えました。ただし、細かいところで見直しが進んで、着実に進歩している印象を受けました。

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沢山の聴講者による、盛況なメイン会場にて

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CIDクラブ会員からの発表