さる 12 月 1−2日、北九州市において第 16 回日本顎顔面インプラント学会総 会・学術大会が開催された。CID からは岡田先生、堀先生、黒江が参加した。 メインテーマは「インプラントのための顎骨・歯槽骨の再建 -エキスパートに 聞く−」で、国内外から多くの招待講師の講演予定されていた。しかし、中国か らの講師3名が尖閣問題によってビザが発給されず来日がキャンセルになると いうトラブルが発生し、プログラムが一部変更されていた。今日では学会運営 においても、チャイナリスクを考慮しなければならないことを認識した。

第 1 日目午前中の注目はドイツ・ハノーバー医科大学の Nils-Claudius Gellrich 教授による特別講演 1「3D イメージングを用いたインプラント歯学に おける歯槽骨再建」で、オリジナルの Cocoon(Containment and contouring)テ クニックが興味深かった。頬骨バットレスから皮質骨を採取し、それを骨欠損 部にシェルとして用い、出来たスペースに自家骨チップを移植するというテク ニックであった(写真参照)。頬骨バットレス部から骨採取を行う報告は他にも あるが、全て粉砕して使用しており、この手法は演者のオリジナルであるとの ことだった。利点としては、1頬骨バットレス部はアクセスしやすく、視野を 確保しやすい、2良質で適した形態の骨を採取できる、3筋肉の付着を剥離す る必要がない、4神経損傷のリスクが低い、等を挙げていた。

講演後質問する機会があり、「骨採取部位としては一般的ではないが、本当に 問題がないのか?」と聞いたところ、「数多くのケースを手がけてきたが、重篤 な合併症の経験はない。オトガイ部からの骨採取の方がずっと合併症が多い。 術前に十分に CT で採取部位の診査を行っている」との回答を得た。

参考文献

1. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23219019
2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17236933

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 午後は移植材を使わないラテラルアプローチの上顎洞底挙上術の術式を確立 した、スウェーデン・ウメオ大学の Stefan Lundgren 教授の講演が注目であっ た。この術式の第一症例の動画を示し、この術式を始めるきっかけを解説した。 TG5 セミナーで勝山先生が解説されたように、上顎洞粘膜を挙上したスペース をしっかりとした閉鎖空間にすることがポイントのようで、開窓は bone saw で 行い切り代を少なくしていた。ザクザク切削していくスピードに驚いたが、ス ウェーデン留学経験のある知人の話では、ウメオ大学はスウェーデン北部の 800km 周囲位の広大な範囲をカバーしているため Lundgren 教授の症例数は膨 大で、「ラフに切っているように見えるが、寸止めです」とのことだった。実際、 エストニアから受診した銃撃された患者の再建ケースを示しており、活躍の範 囲の広さがうかがえた。移植材を用いない上顎洞底挙上術以外にも、仮骨延長 法を駆使した三次元的歯槽堤再建の素晴らしい症例を提示していた。

私はこの学会に参加するまで存在を知らなかったが、この学会が作った「国 際インプラント手帳」(http://www.mfimp.com)はインプラント治療を受けた 患者に対する情報提供の良い手段であると思った。これは、患者自身が受けた インプラント治療内容を記録して情報提供するフォーマットで、転居等で処置 を受けた医院以外でメンテナンスを受ける場合に有効である。英語も併記して いるため、患者が海外転勤になった場合の情報提供を容易にする。

この学会の成り立ちから予測できたものの、参加者および演題は大学、病院 歯科の口腔外科医に大きく偏っていた。発表内容も外科に特化しており、上部 構造、補綴のトピックは皆無といってよい状態であった。正直な感想として、 多くの CID メンバーの方向性とはあまり合致しないのではという印象を受けた。